全国の清掃会社の経営者の方が集まる「日本を磨く会」様が
毎月発行している会報誌の記事を執筆させていただきました。
▼日本を磨く会様のウェブサイトです。
https://migaku-kai.jp/
採用を行なう際に小さな会社が知っておきたいポイントを
全12回のシリーズでまとめています。
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『おさえておきたい!小さな会社の採用成功のヒケツ!』
シリーズ(2)「募集~応募受付編」
第7回:「求人誌・求人サイト以外の有効な募集方法」
前回の第6回の「働く理由は人それぞれ。それに合わせた魅力ある広告づくり」では、求人広告を出稿する際は、求人広告代理店に広告出稿をまる投げすると、こちらが望んでいる人物像を狙うことやその人物に訴えたい自社の魅力をきちんと表現することができないことを説明しました。広告代理店のおすすめをそのまま受け入れるのでなく、自社の採用方針を明確に提示し、自社に必要な求人広告を実現することが大切です。
実は、前回お伝えした以外にも求人広告代理店にまる投げすべきではない理由があるのですが、今回は前回と異なる認識しておくべき理由についてお話していきます。
その理由とは、出稿する媒体が限られてしまうことです。求人広告の代理店は、正確に言うと「求人広告媒体の代理店」です。つまり、自分が元々担当している媒体の“枠”を売ることしかしません。特定の幾つかの紙やネットなどの求人広告の枠を売るだけなので、そこに任せっぱなしにすれば、当然、その会社が売りたい“枠”でしか求人することはできなくなってしまいます。中には、複数の求人広告の代理店を請負っている会社もありますが、複数だとしても、すべての求人広告を扱っていることはありません。やはり限られた“枠”を販売するしかないのです。
求人広告は「仕事をするためにどこかに応募しよう」と気合の入った人しか見ません。逆に言うと、潜在的に「ああ、何かお金稼がなきゃダメだなぁ」とうっすらと意識はしているものの、まだ重い腰を上げきっていない人々には到達できないのです。このような人たちを「潜在的求職者」と言います。それに対して、既に求人広告を見て応募を始めているような人たちを、求人側企業から見える状態になってしまっているので「顕在的求職者」と呼びます。仮に潜在的求職者にこちらの求人情報を伝えることができれば、他社の求人広告をまだ意識して探していないのですから、いわゆる「青田買い」状態になります。求人媒体に求人方法を依存していては、この「青田買い」のメリットが生まれないのです。
さらに、求人媒体以外の求人方法の多くには、ターゲットとなる人材層をより絞り込んで告知することができるメリットもあります。具体的な方法を考えてみましょう。まず、求人媒体以外の既存媒体と言う手段が考えられます。例えば、地域の清掃活動などで町内会や商店街と良好な関係を築いている会社が、町内会の回覧板や商店街の広報誌で近隣の人々に対して求人をしている事例を私は知っています。専門学校や大学が学内で掲載している求人サイトへ無料で掲載してもらうこともできます。
他にも、無料ではありませんが、「雇いたい人物(=ターゲット)」がよく読んでいると思われる雑誌の広告として求人を出すことも考えられます。以前、あるスーパーで、鮮魚売場の調理担当を募集するために、釣り雑誌に求人を出したところ、多数の応募がきたということがありました。このように、求人媒体に限らず、既存媒体に求人広告を出すことも出来るのです。
二つめの方法群は、いっそ、自店で新たな求人媒体を作ってしまうことです。以前からあるDMやニュースレター、メルマガなどの形式で定期的にお客様に情報発信している会社もあるかと思います。そのような自作の媒体に求人広告を載せることも原理的には可能です。手配りチラシを作って配布することも可能です。
また、最近はTwitterやFacebook、InstagramといったSNSで情報発信をする会社も増えてきています。もちろん、上手く活用すれば、有効な求人媒体として募集をすることもできるかもしれません。
もっともコスパの良い最強の求人方法は口コミです。今自社で頑張ってくれている優秀な社員には多分「類は友を呼ぶ」原理で良い知り合いがいます。自社の社員に対して、入社したら「紹介料」を支払うことを条件に、知り合いへの声掛けを積極的に促すことを行なっている会社も増えてきています。以前からある縁故採用にかなり近い方法ですが、近年「リファラル採用」という名称で広がってきています。「人間関係にヒビが入る」とか懸念する方もいますが、自社で働く魅力を伝えた上で、「良かったら、是非」と声を掛ける範囲なら、誰かにいやな思いをさせることはないでしょう。
こうした非求人媒体を用いた方法は場当たり的に見えますが、他業種ではかなり常用されています。代理店へのまる投げを卒業して、より効果的・効率的な求人方法を見つけるべきなのです。
ここで、SNSを求人媒体の一つとして使うときに認識しておきたい留意点がいくつかあります。まず、注意したいのが、「ターゲット」が使っていると考えられるかどうかをよく吟味することです。残念ながら、他社がやっているから、流行っているからという理由で、むやみやたらにSNSでの情報発信を始める会社も少なくありません。ただ、多くの人が利用しているからといって、「ターゲット」が普段使わないようなものに発信したところで、ほとんど意味がないものになってしまいます。
小売店の集客における事例になりますが、以前、老舗和菓子店の経営者の方が、高齢者のお客様というターゲットが明確になっている中、集客のためにInstagramを始めたというのです。いくら頻繁に毎日更新をしたとしても、Instagramによって高齢者のお客様を増やすことはかなり難しいでしょう。これはかなり極端な例ですが、採用の場面でも同様です。自社の魅力を伝えたとしても、本来の「ターゲット」が見ていなければ、残念ながら無駄な労力となってしまいます。
これはSNS以外でも同じように考えます。先述した、スーパーの鮮魚売場の調理担当の募集のために、釣り雑誌に求人を出して応募が来たというのも、釣り雑誌が、「ターゲット」の多くがよく読む雑誌の一つであったため、成立しているのです。ターゲットが目にすることがあるのかどうかは、どの媒体に求人を出すかを検討する上で非常に重要な要素と言えます。
また、SNSを求人媒体として利用する際に「更新頻度」と「内容」にも気を付けなければなりません。最後に更新してから数か月や1年近く経っている場合、人材募集を真面目にやっていない会社だと見られてしまう可能性があります。SNSの方が求人媒体より気軽に検索して見やすいこともあり、他の媒体で熱心に募集をしていたとしても、マイナスなイメージを与えてしまうかもしれません。求人として活用するのであれば、定期的に更新し、使う必要がないのであれば、アカウントをなくしてしまうまたは表示されないようにするなど対処が必要です。
さらに、当たり前ですが、発信する内容についても注意しなくてはなりません。SNSの場合、求人サイトなどと異なり、応募者だけが見るわけではなく、お客様が見ることもあるでしょう。その際に、お客様を不快にさせるような表現があると問題です。そのため、お客様にも見られている想定で、発信内容を考えていくべきなのです。
今回は効果的・効率的な求人方法を用いることの重要性について説明しました。次回は、ターゲットを惹きつける魅力的なキャッチコピーを作るポイントについてお話します。